こんなこと、できますか?

お客様から「こういうこと(物)はできないか?」というご相談やお問い合わせをいただきます。まあ特注機器などはそうして作られるものなので、こちらとしては大歓迎なのですが、ご相談の内容によっては「何がしたいんだろう?」と思うこともしばしばあります。きっと我々の知らないところでいろいろご苦労があるんでしょうね。

以前、AES/EBU信号のLchとRchを入れ替えられないか?というお問い合わせがありました。それこそ「何のために?」と思ってしまいますが、これはいったんレシーバで受けてからLRクロックを反転させてトランスミッタに送ってやればいいので、簡単に解決できます。

Ch.1がL、Ch.2がRの通常の信号を、Ch1, Ch2とも L(またはR ) にして出力できないか?というお問い合わせの時はしばらく悩みました(どうやろうか、ではなく、なんで?)が、これはシリアル・イン/アウトのシフト・レジスタを組んで、LRクロックで切り替えることで実現できました。

こういうお問い合わせの解決用に、社内ではAES/EBUレシーバとトランスミッタ、CPLD、スイッチなどを実装したテスト基板を用意しています。CPLDは実験内容によって回路を書き換えられるので、試作や実験では大変便利です。

お客様からの「こんなことができないか?」というご相談は、我々にとっても製品開発などのヒントとして大変貴重なものです。お問い合わせだけなら無料wですので、お気軽にご相談ください。


上記を書いてから「そういえば・・・」と思って調べたのですが、CirrusLogicのCS8427 AES/EBU TranceiverはMONOモードを持っていて、Lch + Lch あるいはRch + Rchという出力を簡単に設定できることを思い出しました。これ以外でも同じ設定ができるAES/EBUレシーバーがあるはずですね。

ortofon

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ピックアップ・カートリッジの名門、ortofon の昇圧トランス『verto』 に LUNDAHL 製のトランスが使われていました。

LUNDAHLではMCカートリッジ用昇圧トランスを何種類か出しているのですが、これが既製品のラベルを貼り替えただけなのか ortofon オリジナル品なのかはわかりません。LUNDAHL はすぐ特注を受ける(らしい)ので、おそらくオリジナルでしょう。

ちなみに LUNDAHL トランスの品種がやたらと多いのは、こうして作った特注品がやがて LL番号を付けられてリストに載るかららしいです。

verto_02

このトランスの内部と思われる写真もありました。LHNDAHL トランスの中身は私も初めて見ました(笑)。構造がR-core トランスと同じなんですね。どうりでコンパクトで高性能なはずです。

 

LL-TB1/AWA

LL-TB1/AWA

当社の製品に LL-TB2 という Lundahl トランスを使った2chのトランス・ボックスがあるのですが、「1ch用はないのですか?」というお問い合わせをいただきました。ステレオで使用することしか考えてなかったので1ch用は作っていませんでした。それに1ch用だと板金から起こすとかなり割高なものになってしまいます。

そこでタカチさんの既製ケースに合わせて1ch用の基板を新たに作って収めてみました。このケース、なかなか見てくれが良いのと、基板を内蔵するための溝が内部につけられているので使い勝手もよいのです。側面の放熱フィンは今回は全く意味がないのですが、まあそこはデザインということで。名付けて『 LL-TB1/AWA 』。

LL-TB1/AWA inside

中身はLundahl  LL-1524を使っていて、仕様は LL-TM1 と同じです。今のところ試作ということでこのまま販売する予定はありませんが、ご興味のある方は Inter BEE でご覧ください。

 

 

TINA-TI

SPICE というアナログ回路シミュレータがあります。回路図を描くとその結果をシミュレートしてくれるので、試作基板やバラック回路を組む前にその回路のおおよその動きを知ることができ、無茶をやっても部品から煙が出ることもないので大変便利です。

SPICE はもともとカリフォルニア大学バークレー校で開発されたテキスト・ベースのシミュレータです。パラメータの与え方でかなり複雑な回路のシミュレートもできる半面、記述が難しく使いこなすにはかなりの努力が必要でした。

最近はテキスト記述ではなく回路図ベースで記述できる SPICE 系シミュレータが一般的です。ここで紹介する TINA もそのひとつです。

tina-ti

回路図ベースの SPICE 系シミュレータはいくつかあり、私がいろいろ試してみたところでは、回路図を描くといってもシミュレータによっていろいろな作法があって「思ったほど簡単ではない」という印象です(慣れの部分が大きいのでしょうが)。マニュアルも日本語化されたものが無いメーカーがほとんどで、ちょっと込み入ったことをやろうとするとまず専門用語の英語と格闘するところから始まります。

TINA は部品配置の方法も直感的で、使い始めてすぐに回路図が書け、そのままシミュレートができてしまったので、いささか拍子抜けするほどでした。またf特や位相のグラフだけでなくオシロスコープ表示によって波形を動的に観察したり、ファンクション・ジェネレータで任意の波形を生成できるなど、使っていて便利で面白い機能がたくさんあります。

TINAを始めとするSPICE系シミュレータは、各素子(部品)のパラメータを詳細に与えることによって、実際の素子の動作により近づけることもできます。デバイス・メーカーによっては自社の製品のSPICEパラメータを公開しているところもあり、それを使えば自分で記述する必要もありません。逆に理想オペアンプ、理想抵抗器、理想コンデンサの組み合わせで、回路の大まかな動作を高速で検証するといった使い方もできます。

TINAはもともとハンガリーの会社が開発したSPICE系シミュレータなのですが、テキサス・インスツルメンツ(TI)専用のバージョンである TINA-TI は無料でダウンロードして使用することができます。

http://www.tij.co.jp/tool/jp/tina-ti

無料なので当然いくつかの制約はありますが、TI のデバイス・モデルが予めライブラリに入っていたり、日本語化されていたりとなかなか良くできています。私も始めはこのTIバージョンを使ってみてその使い勝手に惚れこみ、すぐに正規版をオーダーしました。

もしシミュレータに興味があるようでしたら、まずは TINA-TI を試してみることをお薦めします。

 

トランジスタのチェック方法

年末からのドタバタがいまだに収束せず、落ちついてブログを更新する時間が取れません。

ということで今回は小ネタでお茶を濁そうという作戦です(笑)

ディスクリート・トランジスタが故障しているかどうかを調べるには、テスターの “導通チェック・モード” を使うのが簡単です。簡単なのですが、「あれ?どっちからどっちに測ればいいんだっけ?」という方も多いのではないでしょうか。

NPNトランジスタの構造は簡単に右のように描けます。ふたつのダイオードが外向きに繋がっているイメージです。PNPトランジスタは内向きになっています。これを見ればテスターでどのように導通を調べればよいか一目瞭然でしょう。

実際のトランジスタの記号には矢印がエミッタ側にしか書いてありませんが、トランジスタの動作としては「ベース-エミッタ間のダイオードを流れる電流を検出してコレクタ-エミッタ間を流れる電流を制御する」ので、こちら側だけ明示してあるわけです。

トランジスタのチェック方法

NPNトランジスタの場合は、テスターを “導通モード” にして、B(ベース)に赤リード、C(コレクタ)に黒リードで導通があり、赤/黒リードを逆にして導通がなければOKです。

同様にB(ベース)に赤リード、E(エミッタ)に黒リードで導通があり、その逆で導通がなければOKです。さらにEとC間にはどちらの方向にも導通がなければOK。この条件が全て成立していればとりあえず決定的なダメージは受けていないと判断できます(性能の劣化まではわかりませんよ)。

PNPトランジスタの場合は、NPNの時の赤/黒リードを逆に読み替えてください。

順方向に導通がない場合は、内部のダイオード構造が破壊されて絶縁状態になってしまっていると考えられます。逆に逆方向に導通がある場合は、ダイオード構造が短絡(ショート)しているわけです。いずれにしても致命的な故障なので、交換が必要です。また基板などに実装されているトランジスタの場合は、判定結果は周囲の部品の影響を受けるので、できれば単体の状態で調べましょう。

 

SOWTERトランスでマイク・アンプを作ってみた

イギリスにSOWTER というオーディオ・トランス・メーカーがあります。1941年創業で、オールド・ニーヴなどのビンテージ機器の互換トランスで有名なメーカーです。それ以外にも各種のトランスを作っているので、音質はどんなものだか試してみたくなりました。トランスの場合、f特とか歪率とかスペックからは音を想像できないので、実際に聞いて評価するしかありません。マイク・アンプを試作してみました。

SOWTERは日本国内には販売代理店がありませんが、海外に通販もしてくれるのでホーム・ページから購入しました。トランス単体の値段はたいしたことないのですが、イギリスからだと送料がバカになりませんね・・・

Sowter

入力には LL1538 の対抗として 4935 をチョイスしました。このトランスは巻線比 1:7で最大レベルが +12dBuです。巻線比で言うと LL1530 同等品です。

出力用には、プロ用では最大出力レベルは+24dBu以上は欲しいところなので、5069 くらいしか選択肢がありません。しかし 5069 はケース・サイズが高さ44mmなので、1Uケースに入りません。改めてLUNDAHLのコンパクトさが際立ちます。

EIA-1Uケースに入らない、さりとてEIA-2Uにしたら内部はスカスカの予感・・・。となると、ケースを focusrite の ISA のような形状にするのが無難でしょうか。ラック・マウントできないとスタジオのコントロール・ルームでは収まりが悪いのですが、とりあえず視聴用の試作ということで妥協しましょう。

回路図は公表するほどのものでもない、教科書どおり(笑)の回路です。

さて、どんな音がするのでしょうか? 筐体設計はこれからなので、年内は難しいかな・・・ Pwb

ADA-12A と ADA-124

製品番号を付けてから、ちょっと後悔する時があります。アナログ・オーディオ分配器のADA-12AADA-124 もそうです。

ADA-12A はADA-12の改良型で、1入力4分配出力のブロックがふたつあり、LINKスイッチで1入力8分配としても使用できます。

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ADA-124 は 1入力2分配出力のブロックを4つ搭載しています。「コンソールの出力をVUメーターとバー・メーターに2分配したいだけなので、4分配も要らない。それより2分配がたくさん欲しい」という現場の声にお応えして開発しました。

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問題はADA12A のと ADA-124 の4 が紛らわしいことです。カタログや展示ボードのタイトルを見ながら「紛らわしいなぁ・・・」と自分で思ってしまいます。お客様にはもっと判りにくいだろうと、申し訳なくなりますが、一度付けた製品型番はそう簡単には変更できません。

可能性としてはADA-12A がバージョンアップしてADA-12B になれば一件落着のようにも思えますが、さていつになるやら・・・

 

 

スプリット・トランス

オーディオ・トランスには『信号分岐(スプリット)用』というものがあります。分配アンプを通さずに信号を2分岐~3分岐できるトランスで、マイクロフォン信号の分岐などに使われます。

マイクロフォンの信号を分岐するのは意外と面倒なものなのですが、スプリット・トランスを内蔵した『スプリット・ボックス』は電源不要で、屋外でも手軽に分岐できるので便利です。変わった例では1本のインタビュー・マイクを分岐して数台の取材カメラに送ったりします。

LUNDAHL にもスプリット用としていくつかありますが、中でも LL1581XLというスプリット・トランスが良い性能を持っています。じつはこのスプリット・トランス、他のトランスと基本構造はいっしょです。たとえば一般のライン・トランスでも、2次側に2巻線あればそれを単独で使って(性能は別として)信号を分岐することができます。もっと極端な話、1次側にも2巻線あれば、どちらかを入力にすれば3分岐できてしまいます。ただし「信号が出てくる」というだけで信号レベルや歪み、ノイズなどの性能は全く保証されません。

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トランスは基本構造が単純なので、こうしたこともできてしまうわけですが、それではなぜ『スプリット用』として設計されているのでしょう? それはスプリット用途ならではの要求があるからに他なりません。

スプリット・トランスは同相入力除去比が高いのはもちろん、外部磁界の影響や一様でない接続先の影響など様々な考慮が必要です。分岐した先は別々の機器なので、グラウンド・レベルすら違っていることもありますが、それらが他の機器に影響を及ぼさないように考慮されています。当然ながら分岐した信号は全く同一でなくてはならないので、精密な巻線技術が求められます。

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前述のように、通常のスプリット用ではないトランスでも信号は分岐できますが、あくまでアマチュア的な発想であり、その信号クオリティについての保証はありません。専用のスプリット・トランスを使った場合とは雲泥の差、ということです。

信号分岐には専用のスプリット・トランスを使いましょう。

 

 

トランスのインピーダンスはテスターでチェック?

某 “教えて” 系サイトで「10kΩ:600Ωのトランスがあるのだが、データシートが無いのでどちらが10kΩでどちらが600Ωかわからない」という質問に「テスターで測って抵抗値の大きいほうが10kΩ」という回答があって笑ってしまったのですが、その回答に “ベストアンサー” が付いていたので複雑な気持ちになりました。これを読んだ第3者が正しい回答だと誤解しなければいいのですが・・・

確かに10kΩ側のほうが巻線数が多いので直流抵抗値も大きいでしょうが、それだけでは済まなくなってしまいます。

トランスの構造を考えてみましょう。トランスは金属性のコアに細いワイヤを巻きつけたものです。鉄の釘にコイルを巻いて電磁石を作りませんでしたか?基本的にはあれと同じです。電磁石では電池(直流)をつないで電磁石にしました。

ところでテスターの抵抗レンジは、被測定物に直流を流して抵抗値を測ります。もうおわかりの通り、トランスのコイルに抵抗レンジにしたテスターのリードを当てたとたん、コイルに直流が流れて中のコアが磁化してしまいます。

どんなに高価なトランスでも、コアが磁化してしまうと本来の音質とかけ離れた、高域の落ちたくぐもった音になります。いったん磁化したトランスは消磁という処理をしないと元に戻りません。

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トランスのインピーダンスを調べるとか、断線の有無を調べる時はテスターの抵抗レンジを使ってはいけません。きちんと発振器をつないで調べましょう。最近の高感度のテスターならACレンジで測定値を読めるはずです。

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この方法で、発振器とテスターを入れ替えて値を比べればどちらが10kΩ側でどちらが600Ω側かわかります。信号レベルがより大きいとき、発振器をつないでいる側が600Ωですね。

 

 

「VUメーターの針が目盛りの赤い範囲に入ると波形が歪む?」

当社では2~8ch の VUメーター・ユニットを製造しています。従来のアナログ入力のほかに AES/EBU 信号を直接入力できるデジタル入力タイプもあります。

VUメーターについて巷でいろいろな都市伝説(?)を耳にすることがあります。「VUメータの針が目盛りの赤い範囲に入ると音が歪む」というのもそのひとつで、先日は専門学校の生徒さんからも質問されました。ということは先生がそう教えている?(笑)

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