TINA-TI

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SPICE というアナログ回路シミュレータがあります。回路図を描くとその結果をシミュレートしてくれるので、試作基板やバラック回路を組む前にその回路のおおよその動きを知ることができ、無茶をやっても部品から煙が出ることもないので大変便利です。

SPICE はもともとカリフォルニア大学バークレー校で開発されたテキスト・ベースのシミュレータです。パラメータの与え方でかなり複雑な回路のシミュレートもできる半面、記述が難しく使いこなすにはかなりの努力が必要でした。

最近はテキスト記述ではなく回路図ベースで記述できる SPICE 系シミュレータが一般的です。ここで紹介する TINA もそのひとつです。

tina-ti

回路図ベースの SPICE 系シミュレータはいくつかあり、私がいろいろ試してみたところでは、回路図を描くといってもシミュレータによっていろいろな作法があって「思ったほど簡単ではない」という印象です(慣れの部分が大きいのでしょうが)。マニュアルも日本語化されたものが無いメーカーがほとんどで、ちょっと込み入ったことをやろうとするとまず専門用語の英語と格闘するところから始まります。

TINA は部品配置の方法も直感的で、使い始めてすぐに回路図が書け、そのままシミュレートができてしまったので、いささか拍子抜けするほどでした。またf特や位相のグラフだけでなくオシロスコープ表示によって波形を動的に観察したり、ファンクション・ジェネレータで任意の波形を生成できるなど、使っていて便利で面白い機能がたくさんあります。

TINAを始めとするSPICE系シミュレータは、各素子(部品)のパラメータを詳細に与えることによって、実際の素子の動作により近づけることもできます。デバイス・メーカーによっては自社の製品のSPICEパラメータを公開しているところもあり、それを使えば自分で記述する必要もありません。逆に理想オペアンプ、理想抵抗器、理想コンデンサの組み合わせで、回路の大まかな動作を高速で検証するといった使い方もできます。

TINAはもともとハンガリーの会社が開発したSPICE系シミュレータなのですが、テキサス・インスツルメンツ(TI)専用のバージョンである TINA-TI は無料でダウンロードして使用することができます。

http://www.tij.co.jp/tool/jp/tina-ti

無料なので当然いくつかの制約はありますが、TI のデバイス・モデルが予めライブラリに入っていたり、日本語化されていたりとなかなか良くできています。私も始めはこのTIバージョンを使ってみてその使い勝手に惚れこみ、すぐに正規版をオーダーしました。

もしシミュレータに興味があるようでしたら、まずは TINA-TI を試してみることをお薦めします。